Grapefruit juice and Medicine 「薬」と「グレープフルーツジュース」
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出典:Wikipedia |
でもホントのところ、どうなの?って思ってませんか?なんかいくたびに同じような話聞くけれど毎回ビミョーにとか 全然違うこと聞かされるという方いませんか?
実は、薬剤師でも正確に理解している人はかなり少ないかもしれません。だから一般の方が混乱するのも無理はないですよネ
①グレープフルーツやその他の柑橘類のどんな成分が影響する?
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ベルガモチン |
②どんなものに多く含まれている?

またその含量は果皮>果肉>種の順です。
③どんなものには含まれていない?
オレンジ、りんご、ぶどう、タンジェリン等には含まれていません。これから温州みかんのおいしい季節ですが、心配ありません。ちなみにみかんの皮は「陳皮」と呼ばれ、漢方薬の成分となっており、食欲増進・健胃などの作用があります。その主成分はこちらは、フラボノイドで「ヘプタメトキシフラボン」です 「六君子湯」で有名。
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陳皮:出典Wikipedia |
④どんなクスリが影響を受ける?
この話をする前に、クスリがどうやって体の中に入るかをご説明しないといけません。
一般に口から摂取した薬物は主に小腸から肝門脈という太い血管に入り、一度肝臓を通って、全身の血管に入っていきます。この際、薬物それぞれ一定の割合で、代謝(平たくいうと薬物が排出されやすい形あるいは効きやすい形だったりするに変形させること)を受けることになります。これを専門的な用語で、ファーストパスエフェクト(略して、first-passなんていいます)小腸の細胞と肝臓がいわゆる外部からのバリアとして働いています。
薬物は身体にとって異物なので簡単に全身に回ってしまっては困ります。人間の身体は、実によくできています。肝臓はいろいろな働きをもった器官ですが異物から身体を守るのにもっとも重要な働きをしています。これからアルコールを飲む機会も増えますが、飲みすぎの方、働きものの肝臓をぜひいたわってあげてください。
こうして身体の「バリア」を通り越した薬が身体のあちこちで効き目をあらわすことになるのですが、グレープフルーツの成分(フラノクマリン類)は この「バリア」の一部を抑えてしまいます。このため本来であれば一定の割合で身体の中に入る薬が思ったより入りすぎてしまうことがおき、結果作用が強くなりすぎたり思わぬ副作用がでてしまうことがあります。ただ人間の身体は、さらによくできたもので一度壊された「バリア」を再生する能力をもっています。ただしそれには少々時間がかります。
よく酵素(詳しくはCYP-P450 3A4という代謝酵素です。これ以外にも代謝酵素は数限りなくあるので、これは別の機会に)のTurn-overという用語を使います。
「バリア」損壊→DNAに情報→RNAに転写→タンパク合成→「バリア」復活!となります。ですから、一度フラノクマリン高含量の柑橘類を摂ってしまうと、「バリア」の機能がもどるまでに、少なくとも2,3日間、長いものでは3~7日間も影響がつづくことになります。2,3時間とか1日空けたからいいわではないのです。
④どんなクスリが影響受けるの?
グレープフルーツとクスリの相互作用は、1989年にカナダの学者らが、エタノールの味をマスクする目的でグレープフルーツを利用した研究で偶然に見いだされました。
以下は、少し分かりにくい話なのですが、グレープフルーツは、クスリが循環血液中から除去される速度には、影響しない(一度、全身の血管に入ってしまえば、そのクスリは、グレープフルーツの影響を受けないということ)、またクスリを直接、静脈内に入れた場合(直接循環血液に入れた場合)も、影響を受けないことから、グレープフルーツが影響を及ぼす部位は、消化管(小腸:さきほどのfirst-passの部分)であることがわかっています。グレープフルーツの成分が影響するのは、すなわちバリアの中でも肝臓ではなく小腸の細胞であることになります。
本来、消化管のところの「バリア」(小腸上皮細胞等)で分解されるはずの、クスリが、
多く入ってしまうというお話をしました。とういことは、もともとあまり「バリア」の影響受けないクスリ(飲んだ薬が、そのままほとんど身体に入るクスリ)は、グレープフルーツの影響を受けないことになります。これが、生体内利用率%(生物学的利用率:Bio-Availability、略してBA)といわれるものです。
このBA%の低いクスリ(「バリア」効果の高いクスリ)のうち、特定の構造をもったクスリが、グレープフルーツの影響を受けやすく、BA%の高いクスリ(「バリア」の効果が低いクスリ)は、影響をほとんど受けない!ということになります。
⑤影響を受けるクスリの実例。
以下に、影響を受けやすいクスリの一例をあげました。具体的に、このクスリは?
という場合は、薬局などで相談してもらうか、メールなどで送っていただいても結構です。
・アミオダロン(商品名:アンカロン)★★★★
・キニジン★★★★
・アゼルニジピン(商品名:カルブロック)★★
・ニソルジピン(商品名:バイミカード)★★
・フェロジピン(商品名:ムノバール)★★
・ベラパミル(商品名:ワソラン)★★
・ニフェジピン(商品名:アダラート)★
・ベニジピン(商品名:コニール)★
・トリアゾラム(商品名:ハルシオン)★★
・カルバマゼピン(商品名:テグレトール)★★
・シクロスポリン(商品名:ネオーラル等)★★★
・タクロリムス(商品名:プログラフ等)★★★
・シロスタゾール(商品名:プレタール)★★
・アトルバスタチン(商品名:リピトール)★★
・シンバスタチン(商品名:シンバスタチン)★★
・テルフェナジン(商品名:トリルダン)★★★★★→すでに販売中止。
・シサプリド(商品名:リサモール)★★★★★→すでに販売中止。
・etc
注:★は、様々な面からのリスクを勘案した、要注意度ですが、
あくまで、個人の主観が入っていますので、参考までにということで。
一昔前、「テルフェナジン」(商品名:トリルダン)というアレルギーを抑える薬がありました。このクスリは、グレープフルーツとの相互作用で、悲しいことに、死亡例を出してしまったクスリで、すでに販売中止となっています。
「テルフェナジン」は本来であれば、「バリア」の効果でほぼ100%「フェキソフェナジン」という安全で有効な成分の形となって、身体に入るクスリだったのですが、グレープフルーツとの相互作用の結果、「バリア」が働かず、「テルフェナジン」が形を変えず、そのまま身体に入ってしまい、本来出るはずの無い、「テルフェナジン」の悪い作用(心毒性)があらわれてしまったのです。「フェキソフェナジン」ってどこかで耳にしたことありませんか?そう花粉症等のひとにはおなじみのアレルギーの薬「アレグラ」なのです
結局「テルフェナジン」(商品名:トリルダン)は、その後販売中止となり
さらにその後「フェキソフェナジン」(商品名:アレグラ)として、再販売となりました。「アレグラ」はそういった、悲しい過去をもつクスリだったのです。
*ちなみに「アレグラ」もグレープフルーツの影響を受けます。
こちらは、逆に効果が弱まってしまいます。名前を変えても、やっぱりグレープフルーツは摂らない方がよいクスリなんですネ。
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