エボラ感染症拡大 緊急事態宣言![]() |
エボラウイルスは大きさが80 - 800nmの細長いRNAウイルス ひも状、U字型、ぜんまい型など形は決まっておらず多種多様 |
[ロンドン/モンロビア 8日 ロイター] - 世界保健機関(WHO)は8日、西アフリカで感染拡大が続くエボラ出血熱について「国際的な公衆衛生上の緊急事態」との認識を示し、感染拡大防止に国際的な協力を訴えた。
WHOは2日間にわたる緊急委員会後に声明を発表。さらなる感染拡大で予想される被害はウィルスの毒性を踏まえると「極めて深刻」とし、「国際的に協調して対応することが、感染拡大を食い止めるために不可欠」と訴えた。
WHOは、ウイルス拡大に対する警戒レベルの引き上げを目的に国際的な緊急事態を宣言。これまでに感染が確認されたギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネは緊急事態宣言を行う必要があるとした。ただ、国際的な渡航や通商を全面的に禁止するべきではないとしている。
<致死率高い最強毒株が流行中>
エボラ出血熱はエボラウイルスによる感染症で、コウモリやサルなどを介してヒトに感染する。患者の血液や体液に接触することでも感染する。
エボラウイルスの潜伏期間は最大21日程度。発症初期の症状は頭痛、発熱、倦怠感などで、マラリアやインフルエンザと似た症状を示す。進行すると激しい下痢や嘔吐が生じ、次第にそれらに血液が混ざってショック状態に陥り、死に至る。ヒトに病原性を持つエボラウイルスは4種類(ザイール、スーダン、アイボリーコースト、ブンディブージョ)あり、今回流行しているのはザイール・エボラウイルスで、致死率が50~90%の最強毒株だ。現在、エボラ出血熱に有効な抗ウイルス薬やワクチンはない。
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エボラウイルス属 (Ebolavirus)
モノネガウイルス目フィロウイルス科に属するウイルスの1属。ザイールエボラウイルス (Zaire ebolavirus) を模式種とする5種を含む。エボラ出血熱の病原体である
当時のザイール、現在のコンゴ民主共和国のエボラ川近くの Yambuku で発見されたザイールエボラウイルス (Zaire ebolavirus) が初めての発見 1976年8月26日の44歳男性患者の症状で判明した。初めはマラリアを疑われたが、その後粘膜等からの出血と多臓器不全という今日で出血熱と呼ばれる症状を発症し死亡した事から、未知の感染症を疑われた
また、同年にはスーダンでも同じ症状の感染症が報告された。今日ではこのウイルスはスーダンエボラウイルス (Sudan ebolavirus) という別種に分類されている
1977年には、この2つの株が同じフィロウイルス科のマールブルクウイルス属の新種か変種と疑われていたが 同時に新種のウイルスとしてエボラウイルスの名が提唱されていた 発見後しばらくはマールブルクウイルス属と共にフィロウイルス属 (Filovirus) と分類されていたが、1998年に、1989年に発見されたレストンエボラウイルス (Reston evolavirus) と1998年に発見されたタイフォレストエボラウイルス (Taï Forest ebolavirus) と共に4種がエボラ様ウイルス (Ebola-like viruses) として分類され、
2002年にエボラウイルス属として定義された 2010年には名称を変更せず再定義されている
特徴
エボラウイルス属は重複の多いマイナス1本鎖RNAウイルスで、フィロウイルス科に共通する特徴である糸状に集合した粒であるビリオンを持つ。糸は大抵曲がっており、U型、6型、杖型、コイル型などと様々な形で呼ばれている
ヒトとヒト以外の霊長類に対して非常に感染力が強く、ヒトの致死率はザイールエボラウイルスで
約90%、スーダンエボラウイルスで約50%に達する極めて致死性の強い病原体であるまた、サル、ゴリラ、チンパンジーに対してもしばしば致命的となる人獣共通感染症である
2011年になって2つの独立した研究グループが、ヒトの遺伝子のうちNPC1 (Niemann-Pick disease, type C1) と呼ばれる遺伝子がコードしているタンパク質が、エボラウイルス属の感染に必須な事が示された
エボラウイルス属の遺伝子変化の速度はインフルエンザウイルスの100倍以上遅い。これはB型肝炎ウイルスと同程度である。マールブルクウイルス属との分化は数千年前程度と考えられている 初めはマールブルクウイルス属と誤解されたものの、実際には遺伝子レベルで50%ほどマールブルクウイルス属と異なる。また抗原交差反応性もほとんど示さない 自然界での正確な分布は不明だが、アフリカ大陸で最初の感染が報告された事、5種のうち4種が人獣共通感染症であることから、アフリカの野生生物がホストであると考えられている
<WHO、感染拡大継続を警戒>
WHOによると、エボラ出血熱による死者数は6日時点で961人。感染が確認されたか、疑われるケースは1779人となった。
WHOのマーガレット・チャン事務局長はジュネーブのWHO本部で開いた電話会見で、「感染はわれわれが制御可能な範囲を超えて急速に拡大している」とし、「WHOが緊急事態を宣言したことにより、関係各国政府はトップレベルでこの問題に注力するようになる」と述べた。
WHOは今回の流行について、エボラ出血熱がヒトから確認されて以来、約40年間で最も深刻な事態だとしている。
ケイジ・フクダ事務局長補は「これは謎の疾病ではなく、封じ込め可能な感染症」とし、空気感染するウイルスではないと強調した。ただ、「今回の感染は過去に例を見ない形で拡大している」との認識を示し、「事態は改善に向かう前に悪化する恐れがある」との懸念を表明。WHOは感染が何カ月にもわたり高水準で継続する可能性があると警戒していることを明らかにした。
その疾患名から、エボラ出血熱の患者では、出血や発熱症状が注目されがちだった。しかし最近、嘔吐や水様下痢といった消化器症状が進行し、脱水による低血圧からショックが生じて死亡するのではないかとする見方が専門家の間で強まっている。WHOは現在、出血や熱といった単語を使わないEbola virus disease(EVD、エボラウイルス感染症)という呼称を使用している。
すでに封じ込めに失敗し 制御不能の状態で OUT BREAKの中 本邦からかすかな光明も
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T-705 |
富士フイルムグループの富山化学工業(東京、菅田益司社長)が開発したインフルエンザ治療薬「ファビピラビル」(RNAポリメラーゼ阻害剤)が、西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱の治療への利用に期待が高まっている。治療薬は富山事業所(富山市下奥井)で開発が進められた。細胞内でのウイルスの増殖を阻止する効果があり、エボラ出血熱でも、感染抑制につながる可能性がある。エボラ出血熱の治療に活用されるまでには、臨床試験や承認が必要となり、通常は数年かかるが、世界的な感染拡大から米国政府機関が手続きを迅速化させる動きもある。
ファビピラビルは、富山化学工業が富山事業所で、抗ウイルス剤の研究によって見いだした。白木公康富山大大学院医学薬学研究部教授との共同研究で、動物実験での有効性を確認した。
ファビピラビルは、これまでのインフルエンザ治療薬とは異なる作用メカニズムを持つ。タミフルなどの既存薬は増殖したウイルスを細胞外に放出できないようにして感染拡大を防ぐのに対し、ファビピラビルは細胞内での遺伝子複製を阻害し、増殖そのものを阻止する。このため、新型インフルエンザや既存薬に耐性を持つウイルスにも効果が期待されるという。
インフルエンザ治療薬としての商品名は「アビガン錠200ミリグラム(開発番号T-705)」で、ことし3月に日本国内で製造販売承認を取得した。米国では富山化学工業が2007年にインフルエンザ治療薬として治験申請。現在は治験の最終段階となる第3相臨床試験(フェーズ3)が進められている。
エボラ出血熱の治療薬としては、富士フイルムの提携先の米製薬企業メディベクターが米食品医薬品局(FDA)との手続きを経て、第1相臨床試験(フェーズ1)に着手する方針。
米通信社が7日、米政府機関がエボラ出血熱の治療に利用する承認手続きを急いでいると報じた。富士フイルムは「今後も医療の発展に貢献したい」と話した
エボラ熱治療薬としての可能性、「わかっていた」
インフルエンザ治療薬「ファビピラビル」はエボラ出血熱に効くのか?
富士フイルムホールディングス(HD)によると、「ファビピラビル」は同社の米国での提携先であるメディベクター社を通じて、エボラ出血熱の治療に使えるよう申請する意向で、現在、米食品医薬品局(FDA)と協議している。
富士フイルムHDは、「これから臨床試験(治験)を行う、そのためにFDAと協議しているところです。治験で安全性や有効性などを確認していくことになります」と話している。承認されれば、エボラ出血熱の感染者治療で米当局が承認する、初めての医薬品のひとつとなる見通しだ。
ファビピラビルは、日本では2014年3月24日にインフルエンザ治療薬として承認されており、米国でも現在、インフルエンザ治療薬として治験の最終段階にある。
富士フイルムHDはファビピラビルの、エボラ出血熱の治療薬としての可能性について、「インフルエンザとエボラ出血熱のウイルスは、似たような型(RNAウイルス)なので、(効く)可能性があることはわかっていました」と話す。
同じインフルエンザ治療薬でも「タミフル」にその効果が見込めないのは、薬の作用(効き方)が異なるため。
インフルエンザウイルスは、感染した細胞内で遺伝子を複製し、増殖・放出することで他の細胞に感染を拡大する。「タミフル」(ノイラミニダーゼ阻害剤)の場合は、遺伝子が複製された後の「放出」を阻害して感染の拡大を防ぐ。しかし、ファビピラビルは「RNAポリメラーゼ阻害剤」といわれる、ウイルスの細胞内での遺伝子の「複製そのもの」を阻害することで増殖を防ぐ、新しいメカニズムを有する薬なのだ。
すでに鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)やA(H7N9)などに対する抗ウイルス作用でも、実験動物レベルでの効果が確認されている。
<その他の未承認薬やワクチンの動向は以下の通り>
日経バイオテクの調べによると、エボラ出血熱に対して開発されていたり、動物実験などで有効性が示唆されている薬剤は、少なくとも5品目ある。
そのうちの1つが上述の富士フイルム傘下の富山化学工業のRNAポリメラーゼ阻害薬ファビピラビル(商品名アビガン)
カナダTekmira Pharmaceuticals社の「TKM-Ebola」は、薬剤送達技術として脂質ナノ粒子(LNP)を利用したRNAi。同社は健常人を対象としたフェーズIを実施していたが、2014年7月に米食品医薬品局(FDA)から臨床試験の中断を求められた。FDAからは、サイトカインの放出のメカニズムを解明するためのデータやプロトコルの改変を要求されており、同社はそれらの要求に対応後、2014年内に臨床試験を再開する方針だ。
米BioCryst Pharmaceuticals社のBCX4430は、ウイルスのRNAポリメラーゼを阻害する低分子のアデノシン類似体。動物モデルを使った実験では、同様フィロウイルスに属するマールブルグウイルスやエボラウイルス、黄熱病ウイルスによるウイルス性出血熱を抑制する効果が確認されており、現在前臨床の段階だ。
米Mapp Biopharmaceutical社の(MB-003)はウイルスの異なるエピトープ(13C6、13F6、6D8)を認識する3種類のヒト化抗体のカクテル。エボラウイルスに曝露した動物を使った実験で、ウイルス性出血熱を抑制する効果得られており、フェーズIの実施に向け、タバコの葉による抗体のGMPレベルでの製造体制を整えている。
米Sarepta Therapeutics社のAVI-7537は、RNAの合成を阻害する核酸類似体(Phosphorodiamidate morpholino oligomers:PMOで、健常人を対象としたフェーズIを実施中。
【8月10日 AFP】世界保健機関(WHO)は9日、西アフリカを中心に猛威を振るっているエボラウイルスのワクチンの臨床試験が近く開始される見込みであり、早ければ来年の早い時期にも広く利用されるようになるとの見通しを示した。
WHOのマリーポール・キーニー(Marie-Paule Kieny)事務局長補はAFPに対し、「現実的(な見通し)だと思う」と語った
WHOのジャンマリー・オクウォベレ(Jean-Marie Okwo Bele)予防接種・ワクチン・生物学的製剤部長も同日、フランスのラジオ局RFIに対し、英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline、GSK)が来月にもワクチンの臨床試験に着手するもようだと述べ、ワクチンの商用利用に楽観的な見通しを示した。
エボラ出血熱には現在のところ有効な治療法もワクチンもなく、最も致死率の高い感染症の1つとなっている。(c)AFP
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